塗装工事の利益はなぜ完工後に消える?工程別原価追跡の作り方
完工後に「思ったより残らなかった」と気づく。その時点では手遅れです。塗装工事の利益は、段取りから仕上げまでの工程のどこかで静かに消えています。本記事では、利益が削れるメカニズムと、工程ごとに原価を追いかける仕組みの作り方を解説します。
完工後に「赤字だった」と知る——その構造的な理由
夜21時、事務所のデスクに積まれた完工ファイルを開く。数字を拾い始めると、胃が重くなる感覚——塗装会社の経営者なら、一度は経験があるはずです。
外壁塗装の現場では、見積時点の原価と実際の原価がずれていきます。そのずれが積み重なって、完工後に初めて「利益が出ていなかった」と判明するのです。
なぜこうなるのか。理由は構造にあります。
- 職人の出面(日当×人数の実績)を現場ごとに集計していない
- 塗料の使用量が歩掛(作業1単位あたりの工数)通りに進まず、追加発注が出ても誰も記録しない
- 養生・ケレン(下地の錆や旧塗膜を除去する作業)など補助工程の人工(にんく:職人1人1日分の作業量)が見積に反映されていない
この3点が重なると、1現場あたり5〜15万円規模で利益が消えていきます。10件こなせば最大150万円の誤差になります。
問題は「わからないまま現場が動いている」ことです。月末に試算表を見て初めて異常に気づく——その時点で、次の現場の段取りはすでに始まっています。
原価管理は完工後の作業ではなく、工程が動いている最中にこそ必要な仕組みです。
利益が消える3つの工程ポイント
現場帰りの軽トラで職人からかかってくる電話。「色番、N80で合ってますか?」——この確認1本で段取りが30分止まることがあります。
塗装工事の原価は、大きく3つの工程ポイントで崩れます。
① 下地処理・ケレン工程
築30年マンション改修では、旧塗膜の浮きや爆裂(コンクリートの膨張・剥落)の程度が現場に入るまでわかりません。
見積時に「ケレン1種」と書いても、実際は「2種相当の作業が必要だった」となり、職人の人工が増えます。この差分を記録しなければ、原価に反映されません。
② 塗料の希釈・追加発注
標準塗布量(1㎡あたりの塗料消費量)は製品仕様書の数値で見積を組みますが、希釈率の調整や重ね塗りの回数で実際の消費量は変わります。
缶を1本追加発注しても、LINEで「塗料1缶頼んで」と伝えるだけで、原価に計上されないケースが大半です。
③ 吹付・見切り工程の段取りロス
吹付塗装では養生(マスキング・シート掛け)に想定外の時間がかかることがあります。見切り(塗り分けのライン処理)も、現場形状によって大きく工数が変わります。
この「段取りの時間」は見積に出てこないため、丸ごと利益を削る要因になります。
3つに共通するのは「現場で発生した情報が事務所に届かない」という構造です。情報の断絶が、そのまま原価の断絶になっています。
工程ごとに原価を追いかける仕組みの作り方
LINEに溜まる職人からの日報写真。「完了しました」の一言だけでは、何人工使ったかも塗料の残量もわかりません。
工程別原価追跡を機能させるには、3つの仕組みが必要です。
仕組み①:工程ごとの人工記録
「今日は何人で何時間、どの工程をやったか」を現場から当日中に入力させます。紙の日報ではなく、スマートフォンから送れるフォームが現実的です。
入力項目を絞ることが定着の鍵です。工程名・人数・時間の3項目だけで十分です。
仕組み②:材料費の即時計上
塗料・シーリング材・養生資材の追加発注が発生した時点で、現場コードと紐づけて記録します。月末の請求書と突き合わせるのではなく、発注時点で原価に乗せる運用が重要です。
仕組み③:工程ごとの利益速報
下地処理完了・中塗り完了・仕上げ完了の節目ごとに、計画原価と実績原価の差を確認します。
完工を待たずに「この現場、ケレン工程で3人工オーバーしている」と気づければ、次の工程で手を打てます。
この3つを回すだけで、完工後に初めて気づく「誤差の発見」が、工事中の「異常の発見」に変わります。
株式会社結建装がDX推進により営業利益率を5.5%改善した事例も、こうした原価の見える化が起点になっています。仕組みの本質は「ツール」ではなく「情報が届く経路を作ること」です。
なぜAngaは塗装業の原価管理に特化したのか
「色番N80を間違えて発注した。現場は止まる。職人は待つ。その損失は誰の原価になるのか」——こういった問いから、Angaの開発は始まっています。
Angaを開発したのは、株式会社イーテクノス代表・井上恭介氏です。井上氏自身が塗装会社の経営者であり、「現場の利益が工事中に消えていく」という課題を自社で経験してきました。
汎用の工事管理ツールや会計ソフトは、塗装業の現場には馴染みません。理由は単純です。
- 「クリマイ」が「クリーンマイルドシリコン」を指すことを、システムは理解しません
- 日塗工の色番(N80・ND-350など)で仕様書を管理する習慣が、汎用ツールの入力欄に合いません
- 3分艶・5分艶・全艶といった仕上げ指定が原価の単価に直結することを、塗装以外の業種向けシステムは想定していません
Angaは、こうした塗装業固有の言語と業務フローをそのままシステムに組み込んでいます。職人の入力語彙を学習し、「クリマイ」と打てば正式品番と単価が紐づく設計です。
中東情勢による塗料原料の価格高騰が続く現在、仕入コストの変動を工程原価にリアルタイムで反映できるかどうかは、経営の安定に直結します。
完工後に気づくのではなく、工事中に知る——その仕組みを、塗装業の現場語で動かすことがAngaの存在理由です。
完工してから赤字に気づいても、もう取り返せない
営業利益率改善幅
5.5%
株式会社結建装がDX推進・原価見える化により達成した営業利益率の改善実績
追加発注による1現場あたり利益消失の目安
5〜15万円
人工ズレ・材料追加・段取りロスが重なった場合の体感値(塗装会社経営者の感覚値)
月間発注書対応の時間ロス目安
20時間超
現場10件規模の塗装会社で発注書・日報突き合わせにかかる月間工数の体感値