仕入れ先を価格だけで選ぶ塗装会社が2026年に詰む理由
「今日つながった材料屋に頼む」——その調達習慣が、2025年12月施行の改正建設業法で致命傷になります。発注履歴のない会社は元請への価格転嫁交渉で数字を出せず、原油・ナフサ高騰のコストを丸ごと被ります。本記事では、仕入れ管理の構造的欠陥と改善の筋道を解説します。
材料費が総原価に占める割合
20〜35%
外壁塗装工事における目安。調達単価の1〜2%のブレが年間利益に直結する
改正建設業法施行まで
2025年12月
請負代金変更方法の明確化と契約書記載事項の厳格化が義務化される期限
塗装工事業倒産件数の動向
前年同期比増
2026年1〜4月の倒産件数が増加傾向。資材高騰・原油ナフサ供給不安が中小企業を直撃
「安い業者に電話」が最もコスト高な調達行動である理由
夜21時、事務所の蛍光灯の下で見積書を直している社長が、翌朝の現場用シリコン塗料の手配を思い出して材料屋に電話をかけます。その電話1本が、利益率を静かに削り続けています。
塗装工事の原価構造は大きく「労務費」「材料費」「経費」の三つに分かれます。そのうち材料費は現場規模にもよりますが、外壁塗装の一般的な工事で総原価の20〜35%程度を占めます。
職人の人工(にんく)や歩掛(作業1単位あたりの工数)に目が向きがちですが、材料費の調達単価が1〜2%ブレるだけで、10件現場があれば年間で無視できない額が消えていきます。
問題は「安さ」ではなく「比較なし」にあります。複数仕入れ先の価格・納期・品質実績をデータとして蓄積していない会社は、次の状態に陥りがちです。
- 同じ日塗工N80番台のホワイト系でも、仕入れ先によって缶単価が500〜800円異なることに気づけない
- 前回発注した製品の希釈率や標準塗布量の実績が残らず、現場ごとに材料ロスが発生する
- 中東情勢による原油・ナフサ供給不安で価格が乱高下しても、どの業者が安定供給できるか判断する材料がない
調達の意思決定を「感覚と電話」に頼っている限り、材料費は常に高止まりします。価格を下げるより先に、比較できる状態を作ることが先決です。
2025年12月の改正建設業法が「発注履歴なし」を致命傷にする
2025年12月、改正建設業法が施行されます。今回の改正では、請負代金の変更方法の明確化と契約書記載事項の厳格化が塗装業経営に直結する要件として盛り込まれています。
具体的には、資材高騰などによるコスト変動を元請・下請間でどう扱うかを契約書に明記することが求められます。また、著しく短い工期の禁止やリスク情報提供義務も新設されており、天候による乾燥待ち、下地処理(ケレン・下地調整)の追加工事、養生の延長コストといった塗装特有のリスクを契約段階で示す必要があります。
ここで問題になるのが「発注履歴のなさ」です。元請に対して「原油高で塗料が○%上がりました」と価格転嫁を求めるとき、根拠として使えるのは過去の仕入れ単価の推移データです。そのデータがなければ、交渉は「なんとなく高くなった気がします」という申し訴えにしかなりません。
材料費が上がった根拠を数字で出せと言われても、過去の発注書がバラバラで出せなかった
現場ごとに使用した塗料の品番(SRシリーズ・クリーンマイルドシリコン等)、発注単価、納期実績が時系列で残っていれば、価格変動の根拠を数字で示せます。逆に残っていなければ、2025年12月以降に締結される契約で、コスト変動リスクを一方的に飲む立場に置かれます。
2026年1〜4月にかけて塗装工事業の倒産件数が前年同期比で増加傾向にある背景には、この「根拠のないまま原価だけ上がる」構造が深く関係しています。
Angaが塗装業の調達管理に特化している理由
現場から戻った軽トラの中で、職人から「クリマイのN80、1缶足りなかった」とLINEが届く——その「クリマイ」がクリーンマイルドシリコンのことだと即座にわかるのは、塗装業の中にいる人間だけです。
Angaは、株式会社イーテクノス代表・井上恭介が塗装会社の経営者として現場の実務を経験した上で開発したツールです。汎用の業務管理ツールではなく、塗装業の発注・仕入れ管理に必要な要素を最初から設計に組み込んでいます。
具体的には次の点で一般ツールと異なります。
- 日塗工・ND・SR等の色番体系に対応した品番管理ができるため、「N80のホワイトを3種類仕入れているが何が違うか」を一覧で確認できます
- 現場ごとの標準塗布量・希釈率の実績値を蓄積し、次回発注時の数量根拠として使えます
- 複数の仕入れ先を登録して価格・納期・品質の実績を並べて比較する機能があり、「今日つながった業者」ではなく「実績のある業者」を選べる状態を作ります
- 職人ごとの呼び名(クリマイ・3分艶・吹付など)を品番と紐付けて登録できるため、発注ミスを構造的に減らせます
「色番N80を誤発注して現場を止めた」「現場ごとの利益が会計を閉めるまでわからない」——こうした塗装業固有の痛みから設計されているため、導入後に「この機能はうちには関係ない」という機能が少ない点が特徴です。
今すぐ始める仕入れ管理の最小ステップ
「データ管理が必要なのはわかった。でも何から手をつけるか」——この問いへの答えは、現場10件分の発注記録を振り返ることから始まります。
段取りの観点から、まず以下の三つを確認してください。
- 直近3ヶ月で使用した塗料の品番・仕入れ単価・発注先が一覧にできるか
- 同じ品番を複数の仕入れ先から買ったことがあるか、あった場合に単価差を把握しているか
- 現場別の材料費実績が、請求書を突き合わせなくても即座に出せるか
三つすべてに「できる」と答えられる会社は、すでに価格転嫁交渉の土台があります。一つでも「できない」があるなら、2025年12月までに仕組みを作る必要があります。
Angaを使う場合、最初にやることは仕入れ先と頻出品番の登録です。これだけで、次の発注から比較データの蓄積が始まります。過去データの遡及入力は後でできますが、今日からの記録は今日しか始められません。
改正建設業法の施行まで、現時点から残り数ヶ月です。元請への価格転嫁を「交渉ごと」ではなく「数字の提示」に変えるために、発注履歴の蓄積を今から始めることが最も現実的な対策です。
材料屋を変えるより先に、材料の記録を変えてください。その一歩が、2026年の倒産急増局面で生き残る経営の土台になります。