塗料の二重発注が消えない理由、電話発注の設計ミス
職人からの電話一本で発注する塗装会社ほど、なぜ毎回同じ色番を二重発注するのか。原因は職人の不注意ではなく、発注という業務そのものの設計にあります。
1. 症状:現場が増えるほど発注ミスも増える
2. 本当の原因①:発注が「人の記憶」に依存している
3. 本当の原因②:発注記録と原価が別々の場所にある
4. なぜ今まで放置されてきたのか
5. どうすれば発注ミスを断てるのか
症状:現場が増えるほど発注ミスも増える
外壁塗装の現場が3件重なると、必ずどこかで塗料が足りなくなるか、逆に余ります。
築30年マンション改修で使う日塗工の色番を、職人が電話口で「いつもの色」と伝えて、塗料屋が別ロットを用意してしまう。希釈率の指示が抜けて、現場で職人が判断して薄めすぎる。こうした話は塗装会社なら一度は経験があるはずです。
現場が10件あれば、発注のやり取りだけで月に相当な時間が消えます。しかも同じ塗料を2回頼んでしまい、余った1缶が倉庫の隅に積み上がる。これが「発注ミス」という言葉の実態です。
本当の原因①:発注が「人の記憶」に依存している
口頭発注の会社では、発注の正しさが職人個人の記憶力に依存しています。
色番、希釈率、標準塗布量、必要缶数。これらは本来、現場ごとに図面と見積から機械的に決まる数字です。ところが電話一本で伝えると、聞いた側の解釈が入ります。「クリーンマイルドシリコン」を職人が「クリマイ」と略して伝え、聞いた事務員が別の商品と混同する、というのはよくある食い違いです。
人の記憶と伝聞に頼る仕組みは、現場数が少ないうちは何とか回ります。ですが現場が増えた瞬間、必ず破綻します。仕組みの問題であって、職人の注意力の問題ではありません。
本当の原因②:発注記録と原価が別々の場所にある
多くの塗装会社では、発注は電話かLINE、記録は紙の伝票かノート、原価計算はエクセルか決算時、とバラバラの場所に存在しています。
この分断があるせいで、二重発注が起きても誰も気づけません。気づくのは決算のタイミングで、なぜかその現場だけ材料費が突出している、というときです。原因を遡ろうにも、発注の記録が電話の記憶頼みなので、検証すらできません。
なぜ元請も気づけないのか
元請は工程と仕上がりしか見ていません。発注書という紙一枚が現場ごとの原価をズラしていても、外からは見えないのです。
なぜ今まで放置されてきたのか
理由は単純で、発注の仕組みを変えるコストより、今のやり方を続けるコストのほうが「見えにくい」からです。
二重発注で余った塗料代は、月次の損益では埋もれてしまいます。人手不足の現場で、発注システムの導入や運用ルールの整備に時間を割く余裕もありません。
ですがここに来て状況が変わりつつあります。2025年12月施行の改正建設業法では、契約内容の明確化や請負代金の変更方法の整理が求められるようになりました。人件費上昇への価格転嫁も含めて、どんぶり勘定の発注管理では立ち行かなくなる会社が増えていくはずです。実際、塗装工事業では2026年に入ってからの倒産件数が前年同期より増えており、資材高騰と職人不足に加えて、こうした管理の甘さが経営を圧迫している面もあります。
どうすれば発注ミスを断てるのか
発注ミスを個人の注意力で止めようとする限り、現場が増えれば必ず再発します。断つには、発注の記録と現場・原価を同じ場所で紐づける仕組みが要ります。
電話で色番聞き返しても、結局違う缶が届いたことあるよ
色番、希釈率、必要缶数を現場ごとに固定して残せば、職人の記憶に頼らず誰が発注しても同じ結果になります。二重発注も、記録を見た瞬間に気づけます。
私たちイーテクノスも、もともと塗装会社を経営する中で同じ問題に何度もぶつかりました。電話で聞き返しても発注ミスが減らず、現場ごとの利益が決算まで見えないという状態です。そこで自社の現場で使うために作ったのが、LINEで発注しながら現場・原価まで一本化できる「Anga」です。特別なアプリを覚える必要がなく、普段のLINEのやり取りがそのまま発注記録と原価管理につながります。
よくある質問
Q. 塗装の発注ミスはなぜ職人に注意しても減らないのですか
注意力の問題ではなく、発注の正しさが個人の記憶や伝聞に依存する仕組みそのものに原因があるためです。色番や希釈率を現場ごとに記録として固定しない限り、担当者が変わるたびに同じミスが再発します。
Q. 二重発注が起きているかどうか、どう気づけばいいですか
発注の記録と現場ごとの原価が同じ場所で紐づいていれば、余った缶数や重複した発注がすぐ見えます。逆に電話やノートだけで管理していると、決算時まで気づけないことがほとんどです。
Q. 改正建設業法は塗装会社の発注管理にも関係ありますか
直接は契約や工期、価格転嫁の明確化が主眼ですが、どんぶり勘定の原価管理では請負代金の変更根拠を示しにくくなります。発注記録を整えることは契約対応の土台にもなります。