資材高騰なのに旧単価で見積る塗装会社の末路
シーラーが1缶800円上がっても、去年の見積のまま出す。その積み重ねで粗利が消えていく手順のズレを、発注前・発注時・確認の3段階で洗い出します。
1. 塗料屋の値上げ通知を放置した3ヶ月後に起きたこと
2. 手順1:発注前にやる「原価の棚卸し」
3. 手順2:見積を出すときの「価格転嫁」の入れ方
4. 手順3:現場ごとの利益を「決算前」に確認する仕組み
5. 確認作業を「人力」から離すという選択肢
塗料屋の値上げ通知を放置した3ヶ月後に起きたこと
取引先の塗料店から「来月からシリコン系1缶2,200円アップ」のFAXが届いても、多くの現場監督はそれを見積の根拠に反映しません。
理由は単純です。過去の見積テンプレートをコピーして使い回しているからです。
ある会社では、この通知を放置したまま半年で12件受注しました。決算で粗利率を見たら、去年より4ポイント下がっていました。原因を追うと、資材費の値上げ分がそのまま会社の持ち出しになっていたことが分かりました。
2026年に入って塗装工事業の倒産件数が前年同期より増えている背景には、こうした「値上げを知っていたのに見積に載せなかった」ケースが少なくありません。職人不足と資材高騰、原油・ナフサ供給不安が同時に重なり、原価管理の甘さがそのまま資金繰りを直撃しています。
手順1:発注前にやる「原価の棚卸し」
まず塗料単価を今月の数字に更新する
見積書のテンプレートに入っている塗料単価は、いつの数字ですか。3ヶ月前、半年前のまま固まっている会社がほとんどです。
手順はシンプルです。
- 主要塗料(下塗り・中塗り・上塗り)の現在単価を塗料店に確認する
- 希釈率と標準塗布量から1㎡あたりの実コストを再計算する
- 見積テンプレートの単価欄を上書きする
ここでつまずくのが、「前回と同じ現場だから単価も同じだろう」という思い込みです。同じ塗料でも仕入れ時期が違えば単価は変わります。月初に一度、単価だけ確認する習慣がない会社は、ここで確実に原価を見誤ります。
手順2:見積を出すときの「価格転嫁」の入れ方
資材費が上がった分を、そのまま元請けや施主にぶつけると角が立つと思っていませんか。
実はやり方があります。
- 見積書の内訳に「材料費(○月時点単価)」と明記する
- 資材高騰分を別項目で切り出す(本体価格に埋め込まない)
- 「単価改定のお知らせ」を一枚添付する
ここでつまずくのが、値上げ分を材料費に混ぜ込んで総額だけ上げてしまうパターンです。元請けから見ると「何が上がったか分からない値上げ」に見え、値切り交渉の材料にされます。内訳を分けるだけで、交渉の土俵が変わります。
2025年12月施行の改正建設業法では、請負代金の変更方法の明確化と契約内容の強化が求められています。契約書に価格転嫁の根拠を残す仕組みは、今後は努力目標ではなく実務上の必須項目になります。
手順3:現場ごとの利益を「決算前」に確認する仕組み
多くの塗装会社が抱える最大の弱点は、現場ごとの利益が決算まで見えないことです。
- 現場が完了するたびに実際にかかった材料費・人工を記録する
- 見積時の想定原価と実績原価を突き合わせる
- 差異が5%を超えた現場は理由を書き出す
ここでつまずくのが、「忙しいから決算期にまとめてやろう」という先送りです。10現場分をまとめてやろうとすると、どの現場でどれだけ資材費が上振れしたか記憶が飛んでいて、結局ざっくりした数字しか出せません。
1現場終わるごとに5分でいいので数字を残す。これができている会社とできていない会社で、粗利率の差は如実に出ます。
改正建設業法では長時間労働に依存した運営も難しくなります。労働者の待遇改善で人件費が上がる分、原価管理の精度を上げないと利益はさらに薄くなります。
確認作業を「人力」から離すという選択肢
ここまでの手順を紙とExcelでやろうとすると、現場が10件あれば単価更新と原価突き合わせだけで月15〜20時間は飛びます。しかも属人化しやすく、担当者が辞めると仕組みごと消えます。
私たちイーテクノスも、塗装会社を経営する中で同じ壁にぶつかりました。現場ごとの利益が決算まで見えず、資材の値上げ分をどこで見積に反映したか追えなくなった経験から、原価と見積を1つの画面で管理できるツールAngaを作りました。
単価更新も現場別の実績原価も、LINEで送るだけで記録が残る仕組みにしています。
手順を覚えるより先に、まず今月の塗料単価を1回だけ見直してみてください。それだけで来月の見積の精度は変わります。
よくある質問
Q. 塗装業の原価管理は何から手をつければいいですか
まず塗料単価の見直しから始めてください。見積テンプレートの単価が古いままだと、どれだけ丁寧に工数計算をしても原価はズレます。単価更新→原価再計算→現場ごとの実績記録という順番で、小さく回すのが確実です。
Q. 資材高騰分を見積に反映すると元請けに嫌がられませんか
内訳を分けずに総額だけ上げると値切られやすくなります。材料費を別項目にして単価改定のお知らせを添付すると、根拠が明確になり交渉しやすくなります。改正建設業法でも価格転嫁の仕組みが求められています。
Q. 現場ごとの利益を把握する簡単な方法はありますか
現場が終わるたびに実際の材料費と人工を5分で記録する習慣をつけることです。決算期にまとめて計算しようとすると数字の記憶が飛びます。Angaのようなツールを使えばLINE送信だけで記録が残り、突き合わせが楽になります。