塗料在庫が自己申告で破綻する理由
築28年マンション、外壁塗装480㎡、職人3人。原油高の中、自己申告の在庫管理が招いた欠品と過剰発注の実話から、塗料在庫管理の見直し方を考えます。
1. 月曜7時、シリコン塗料が2缶足りない
2. 「自己申告」が壊れる仕組み
3. 欠品の翌週、今度は過剰発注が起きた
4. 数字を「人の記憶」から外した結果
月曜7時、シリコン塗料が2缶足りない
現場は築28年、3階建てマンションの外壁塗装です。延床480㎡、工期14日、職人は3人。日曜の夕方に主任が「上塗り用のシリコン、残り3缶あります」とLINEで報告していました。
月曜朝、実際に倉庫から出したのは1缶。棚には空き缶が2つ転がっていました。前の現場で余った分を別の職人が使い切っていたのですが、誰も在庫表に反映していませんでした。
上塗りは2日間で8缶使う計算です。足りない分は塗料店に電話しましたが、原油高の影響で入荷が週2回に減っていて、その日の配達には乗りません。結局、午前中の3時間、職人3人が現場で待機することになりました。3人×3時間=9人工分、約3万円弱がそのまま空費です。
「自己申告」が壊れる仕組み
この会社では、塗料の残量は職人の目視と記憶に頼っていました。缶のラベルに残量を書く運用はあったものの、忙しい現場では後回しになります。
在庫がズレる3つのパターン
- 使い切っていない缶を「残りわずか」と大まかに報告する
- 別現場から借りた缶が在庫表に反映されない
- 色番(日塗工)が近いものを混同して数える
この現場でも、ND色の外壁用と付帯部用の缶が倉庫で混ざっていて、担当者が数え間違えていました。原油高で1缶あたりの単価が上がっている時期に、この手のズレは在庫金額のブレとしてそのまま経営を直撃します。
欠品の翌週、今度は過剰発注が起きた
欠品を怖がった主任は、次の週の発注で「多めに頼んでおこう」と判断しました。本来必要な数は上塗り用8缶、下塗り用6缶の計14缶です。実際に発注したのは20缶。
工期が終わって余ったのは5缶。原油高で塗料価格が上がっている中、使い切れない在庫を倉庫に抱えることになりました。倉庫の保管スペースも埋まり、次の現場で別の色番を置く場所がなくなるという副作用も出ています。
欠品を恐れて多く発注し、余って資金を圧迫する。この往復を、この会社は過去1年で少なくとも4回繰り返していました。1回あたりの空費は3万円から5万円程度で、年間で見ると決して小さな額ではありません。
缶が足りないと分かった時の、あの3時間の待機が一番こたえます
数字を「人の記憶」から外した結果
この会社が変えたのは、報告のタイミングと記録の仕方でした。使った缶数をその日のうちに現場ごとに記録し、色番・希釈率とセットで残量を管理する形に変えています。
次の現場、築15年の戸建て2棟同時工事(外壁200㎡×2)では、上塗り分の発注を7缶に絞り、実際の使用量は6.5缶でした。欠品も過剰在庫も出ませんでした。発注書を作る手間も、以前は現場ごとに紙とLINEを見比べて20分かかっていたのが、記録が一元化されたことで5分程度に減っています。
改正建設業法の施行で、資材高騰分の価格転嫁や契約内容の明確化が求められる流れも出ています。在庫の数字が曖昧なままでは、原価がぼやけて価格交渉の材料も作れません。
記録を人に頼らない仕組みとして、私たちイーテクノスが自社の現場で困った経験から作ったのが在庫管理アプリ「Anga」です。現場ごとの使用量と残缶数をLINEで報告するだけで自動集計され、発注の判断が「記憶」から「数字」に変わります。欠品と過剰発注の両方を減らす選択肢のひとつとして、試してみる価値はあります。
よくある質問
Q. 塗料の在庫管理はどこまで細かくやるべきですか
色番・希釈率・用途(上塗り/下塗り)ごとに残量を記録するのが目安です。現場単位ではなく缶単位で追わないと、複数現場を行き来する塗料の移動で必ずズレが出ます。原油高の時期は特に金額インパクトが大きいため注意が必要です。
Q. 職人の自己申告をやめて何を導入すればいいですか
紙の在庫表からLINE報告+自動集計への切り替えが現実的です。報告のハードルを下げつつ、その日のうちに記録する運用に変えるだけで、欠品・過剰発注の往復はかなり減らせます。
Q. 過剰発注と欠品、どちらの対策を先にすべきですか
多くの現場は欠品を恐れて過剰発注に振れる傾向があります。まず使用量の記録を正確にして、必要缶数の計算精度を上げることが先です。精度が上がれば欠品対策の在庫バッファも最小限で済みます。