塗装業の丼勘定給料が利益率を下げる理由
繁忙期なのに利益が残らない。原価管理をせず現場終了後に人件費を決める丼勘定が、その正体です。手順で直す方法を解説します。
1. まず自社の丼勘定っぷりを数字で確認する
2. 現場ごとの人件費を先に決めてから職人に伝える
3. 現場終了後にズレを確認し、次の見積に反映する
4. 仕組み化まで持ち込む、その先の選択肢
まず自社の丼勘定っぷりを数字で確認する
外壁塗装の現場が10件同時に動いている会社で、各現場の人件費が「だいたいこれくらい」で決まっているなら、それは丼勘定です。
手順は3つです。まず直近3ヶ月の完了現場を10件選びます。次に見積時に想定した人工(作業員1人の1日分の稼働)と、実際にかかった人工を並べます。最後に差分が2人工以上ある現場を赤マーカーで囲みます。
ここでつまずく
ここでよくある失敗は、日報が「今日も現場A、順調」しか書かれておらず、実際に何人工かかったか誰も記録していないケースです。日報の形式を変えない限り、この確認作業自体が始まりません。
塗装工事業の倒産が2026年に入って増えているという業界の動きもあります。職人不足や資材高騰に加え、原価が見えない会社ほど、繁忙期に人を増やしても利益が薄いまま倒産リスクに近づきます。
現場ごとの人件費を先に決めてから職人に伝える
丼勘定を止める第一歩は、現場に人を出す前に人件費の上限を決めることです。
- 見積書の人工数から、現場ごとの「使える人件費の上限」を算出します。
- 職人ごとの歩掛(作業1単位あたりの工数)を過去現場から拾い、その現場で何人工かかりそうか予測します。
- 上限と予測が近い場合は、現場監督が事前に「この現場は3人工で仕上げてほしい」と職人に伝えます。
ここでつまずく
新人の現場監督が、この上限を職人に伝えず「とりあえず終わったら教えてください」で現場に送り出すと、丼勘定に戻ります。数字を先に渡すことが肝です。
ベテラン職人ほど「今までのやり方でいい」と抵抗することもあります。ここは監督が数字の根拠(見積書の人工数)を見せて説明するしかありません。
現場終了後にズレを確認し、次の見積に反映する
現場が終わったら、丼勘定に戻らないための確認作業が要ります。
- 予測人工と実際の人工を突き合わせます。
- ズレた原因を1行で書きます(下地処理が想定より荒れていた、雨で1日流れた、など)。
- 同じ現場タイプ(築30年マンション改修、木造2階建てなど)の次回見積に、このズレを反映します。
ここでつまずく
ここでの典型的な失敗は、ズレの原因を「まあいろいろあって」で済ませてしまうことです。原因を1行でも書かないと、次の見積が永遠に同じ精度のまま丼勘定に戻ります。
2025年12月に施行された改正建設業法では、著しく短い工期の禁止や、天候・下地状況などのリスク情報を契約段階で明記する義務が加わりました。原価管理をせず口約束で工期と人件費を決めてきた会社ほど、この対応に苦労することになります。
仕組み化まで持ち込む、その先の選択肢
3つの手順を1〜2ヶ月続けると、現場ごとの利益率が見えてきます。ここまでは紙とExcelでも可能です。
ただ現場が10件を超えると、突き合わせ作業だけで毎月20時間近く飛ぶ会社も出てきます。改正建設業法で賃金水準の確保と労働条件改善が必須になった今、人件費上昇分を価格に転嫁する仕組みも同時に整える必要があります。
私たちイーテクノスは塗装会社を経営しながら、この丼勘定の突き合わせ作業に何年も苦しみました。その経験から、現場ごとの人件費と実績をLINEから記録し、原価を自動で見える形にするAngaを作りました。
手順を仕組みに落とし込む段になったら、こうしたツールも選択肢の一つです。
よくある質問
Q. 塗装業の利益率はどれくらいが目安ですか
会社の規模や元請・下請の立ち位置で差がありますが、人件費と資材費を現場ごとに正確に把握できていない会社ほど、繁忙期でも利益率が伸びない傾向があります。まずは自社の現場別の人工ズレを数値化することが出発点です。
Q. 丼勘定をやめると職人のモチベーションは下がりませんか
人件費の上限を事前に伝えるだけでは下がりません。むしろ早く終わらせた分を評価する仕組みを合わせて作ると、職人側にも動機が生まれます。数字を隠さず見せる姿勢が信頼につながります。
Q. 原価管理を始めるのに何から手をつければいいですか
まず直近の完了現場10件で、見積時の想定人工と実際の人工を突き合わせる作業から始めてください。この差分を可視化するだけで、丼勘定の実態と改善ポイントが見えてきます。