塗装業の原価管理、赤字現場を放置する理由

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塗装業の原価管理、赤字現場を放置する理由

職人8人、工期23日、外壁塗装面積約1,200平米。見積もりは黒字だったはずの現場が、なぜ決算で赤字と判明したのか。ある塗装会社の1現場を追いました。


1. 見積もりは利益率18%、悪くない数字だった

2. 雨で3日流れ、職人の頭数だけが増えていった

3. 決算で判明した赤字、原因は「缶数」ではなかった

4. 次の現場から変えたこと、変わらなかったこと

見積もりは利益率18%、悪くない数字だった

築28年、5階建て、総戸数32戸のマンション大規模修繕。外壁と屋上防水、鉄部塗装を含む一式で、元請けとの契約額は980万円でした。

見積もり段階で材料費と外注費を積み上げ、粗利率は18%と算出していました。塗料は下塗りシーラー缶と上塗りシリコン塗料で計算上84缶。工期23日、平均出面(現場に入る職人の数×日数)は1日6〜8人という計画です。

この時点で社長も現場監督も「悪くない現場」と見ていました。問題が表面化するのは、着工から2週間後のことです。

雨で3日流れ、職人の頭数だけが増えていった

着工10日目、梅雨前線が停滞して足場養生ごと3日間の中止が続きました。工程が詰まり、監督は工期を守るために応援の職人を2人追加で呼びます。

ここで最初のズレが起きました。応援で入った職人の日当は、常用の職人より2,000円高い設定でした。ですが現場監督はその日当を把握しておらず、出面表には「応援2名」としか記録していません。

誰がいくらで何日入ったか、誰も足していなかった

実際には、当初計画の6〜8人体制が、後半10日間は9〜11人体制に膨らんでいました。人工が計画より延べ18人工増えていましたが、この時点で誰も金額に換算していません。日報には人数と作業内容は書かれていても、日当×人数の集計欄がなかったからです。

決算で判明した赤字、原因は「缶数」ではなかった

工事は無事に完了し、足場も外れ、元請けへの引き渡しも問題なく終わりました。塗料の使用量は下塗り82缶、上塗り88缶と、見積もりの84缶からわずかに超過した程度です。標準塗布量から大きく外れておらず、材料原価はほぼ計画通りでした。

異変が見つかったのは3か月後の決算処理です。この現場だけを抜き出して原価を再集計したところ、労務費が見積もり比で127万円超過していました。粗利率18%だったはずが、実際は5%を切っていたのです。

原因は塗料でも歩掛の見立てでもなく、応援職人の日当差と延べ人工の増加を、誰も現場ごとに集計していなかったことでした。日報はあった。出面表もあった。ですが「この現場に何人×何日×いくら投入したか」を足し算する仕組みがなかったのです。

日報はあったんです。足し算する場所がなかっただけで。

次の現場から変えたこと、変わらなかったこと

この一件のあと、会社では現場ごとに人工と日当を都度入力する運用に切り替えました。応援職人が入った日は、その日のうちに日当を記録し、計画人工との差を現場監督が見られるようにしています。

次に似た規模のマンション改修(築25年、35戸)を受けた際は、着工12日目の時点で「計画より延べ4人工超過、労務費で8万円増」という数字が現場監督のスマホで確認できました。3日流れた工程を、応援1人・残業2時間の調整で吸収し、結果として粗利率は計画の16%に対して実績14%まで踏みとどまっています。

完全に計画通りとはいきません。ですが「終わってから赤字と気づく」状態と、「進行中に数字で気づいて手を打てる」状態では、経営としての打ち手がまったく違います。

私たちイーテクノス自身も、この「現場が終わるまで利益が見えない」状態に長年悩んできた塗装会社です。日報や出面の記録はあるのに、現場別の日当×人工が自動で集計されない。その課題から、現場ごとの利益をリアルタイムで見える形にするために作ったのが原価管理システムのAngaです。

出面を入力するだけで、現場別の労務費と粗利が積み上がっていく仕組みにしています。決算で初めて赤字に気づく、という状態を減らす一つの手段として使えます。

よくある質問

Q. 塗装業で現場別の原価管理をどこから始めればいいですか

まずは日当と出面(誰が何日入ったか)を現場ごとに集計するところから始めます。材料費は見積もりとの差が出にくい一方、人工の増減は日報だけでは見えにくく、赤字の主因になりやすい部分です。ここを現場単位で数字にすることが最初の一歩です。

Q. どんぶり勘定でも今まで黒字だったのに問題ありますか

工期が計画通りに進んだ現場では表面化しにくいだけで、雨天順延や応援職人の追加が起きた現場では利益が削られている可能性があります。決算で全体が黒字でも、赤字現場が黒字現場に隠れているケースは珍しくありません。

Q. 原価管理システムを入れる余裕がない会社はどうすればいいですか

エクセルの出面表に日当単価の列を追加し、現場ごとに延べ人工×日当を集計するだけでも効果はあります。ただし手入力の集計は続きにくいため、続けられる仕組みかどうかを基準に選ぶことをおすすめします。

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