職人の高齢化とは?塗装業界の採用計画を解説!

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職人の高齢化とは?塗装業界の採用計画を解説!

更新日:2026年10月11日 | 約9分で読めます | 監修:井上恭介(株式会社イーテクノス 代表取締役)

今いる職人が何歳まで現場に立てるのか、具体的に計算したことのある塗装会社は多くありません。この記事では職人の高齢化という問題の正体と、引退時期から逆算した採用計画の立て方までを網羅的に解説します。読み終える頃には、自社の人員構成をどう点検し、いつから手を打つべきかが分かります。


目次

  1. 職人の高齢化とは・なぜ今問題になるのか
  2. 引退時期から逆算する発想を持つメリット
  3. 高齢化対策として使える業務
  4. 採用計画を立てる際の注意点
  5. 採用計画を立てる手順
  6. 日報データを活用した高齢化対策の利用イメージ

職人の高齢化とは・なぜ今問題になるのか

塗装業界における高齢化の構造

塗装業界の高齢化は、一時的な人手不足とは性質が異なります。新しく入ってくる若手の数より、ベテラン職人が引退していく数のほうが多い状態が続くと、現場を回せる人数は毎年少しずつ減っていきます。これは天候や受注量の波とは関係なく進む、構造的な問題です。

外壁塗装やマンション改修の現場では、ケレン(下地のサビや汚れを落とす作業)や養生、吹付といった工程ごとに経験がものを言います。経験豊富な職人が抜けると、単に人数が減るだけでなく、工程全体の歩掛(作業1単位あたりの工数)が読みにくくなります。

若手が定着しにくい理由

若手が入っても数年で辞めてしまう現場は珍しくありません。理由は給与や将来性への不安だけでなく、技術を教える側のベテランに余裕がなく、十分に指導の時間を取れていないことも大きく影響します。

たとえば一人親方のもとに新人が1人ついても、師匠本人が現場を回すことで手一杯だと、教えるタイミングを逃し続けてしまいます。その結果、若手は成長を実感できないまま離職し、会社には「また採用からやり直し」という状態が繰り返されます。

「まだ元気だから大丈夫」が危険な理由

60代後半や70代の職人が今も現場に立てているからといって、それが5年後も続く保証はありません。体力の衰えは本人の自覚より先に、高所作業や長時間のケレンといった負荷の高い工程から表れてきます。

「まだ元気だから大丈夫」という感覚的な判断は、引退が突然のケガや体調不良というかたちで訪れたときに、代わりがいないという最悪のタイミングで会社を直撃します。年齢と稼働状況を具体的に把握しておかない限り、この危険は見過ごされたままになります。

引退時期から逆算する発想を持つメリット

採用のタイミングを先回りできる

職人がいつまで現場に立てるかをあらかじめ見積もっておくと、採用を「人が足りなくなってから」ではなく「足りなくなる前」に動かせます。求人を出してから実際に現場で戦力になるまでには、応募・面接・試用期間を含めて相応の時間がかかるためです。

逆算の発想がないまま採用を始めると、ベテランが抜けた穴を埋めきれないまま新人だけで現場を回すことになりかねません。先回りできれば、引退と入社のタイミングを重ねて準備できます。

技術の引き継ぎ期間を確保できる

外壁塗装の下地処理や色番(日塗工・NDなど)の判断は、口頭の説明だけでは身につきません。ベテランの引退時期が分かっていれば、引退までの数年間を技術継承の期間として意図的に確保できます。

逆に引退の直前になって初めて引き継ぎを始めようとしても、現場で一緒に動ける時間はわずかしか残っていません。期間を見込んでおくことで、同じ現場に若手とベテランを組ませる計画も立てやすくなります。

歩掛や工程の見通しが立てやすくなる

何年後に何人のベテランが抜けるかが分かっていれば、将来の工程表や見積もりに使う歩掛も、今の人員構成を前提にしたまま作らずに済みます。引退時期からの逆算は、採用計画だけでなく日々の工程管理にも波及します。

人数が減る前提で工期や人工(作業員1人が1日働く量の単位)を組み直しておけば、受注した後になって無理な人繰りをする事態を避けられます。

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高齢化対策として使える業務

職人ごとの年齢・稼働状況の棚卸し

逆算採用の出発点は、今いる職人の年齢と稼働状況を一人ずつ確認することです。名簿に年齢を書き足すだけでなく、高所作業ができるか、1日にどのくらいの現場をこなせているかまで含めて棚卸しをします。

この作業は特別なシステムがなくても、エクセルや紙の一覧表で始められます。すでに感覚的には把握している内容でも、文字にして並べてみると、思っていたより年齢構成が偏っていることに気づく会社が多くあります。

引退予定年齢の仮設定と共有

年齢と稼働状況を棚卸ししたら、職人ごとに「何歳まで現場に立ってもらう想定か」を仮に置いてみます。本人の意向を無視して決めるものではなく、あくまで会社側の計画のたたき台として設定するものです。

仮設定した引退年齢は、経営者や現場監督だけで抱え込まず、本人とも早めに共有しておくと、互いの認識のズレを防げます。たとえば職人の山田さんに「65歳頃を一つの目安として考えている」と伝えておけば、本人も体力や働き方を見直すきっかけになります。

若手育成に必要な工数の見積もり

若手を一人前にするまでにどれくらいの期間と工数がかかるかを、工程別に見積もっておきます。外壁塗装でいえば、養生だけなら数カ月でも、下地処理の判断まで任せられるようになるには数年単位の経験が必要になる場合もあります。

主な見積もりの視点は次のとおりです。

  • どの工程から任せ始めるか
  • ベテランが指導に割ける時間はどのくらいか
  • 一人前と呼べる状態をどこに置くか

この見積もりがあることで、育成期間を見込んだ採用スケジュール(第5節で扱います)の土台ができます。

外壁塗装・下地処理など工程別の技術継承計画

技術継承は「職人全体」ではなく、工程ごとに分けて計画したほうが実行しやすくなります。たとえば外壁塗装のケレンや下地処理、吹付の希釈率の調整など、工程ごとに得意なベテランが異なることも多いためです。

工程ごとに「誰から誰へ」「いつまでに」を書き出しておくと、特定のベテラン一人に継承の負担が集中する事態を避けられます。築30年のマンション改修のように難易度の高い現場を、引き継ぎの実地訓練の場として計画的に使う方法もあります。

出面データを使った稼働実態の把握

年齢だけでなく、実際の出面(現場への出勤状況)データを見ることで、感覚ではなく実態に基づいた高齢化対策が可能になります。同じ60代でも、月20日フルに現場に出ている職人と、半日勤務が増えている職人とでは、残された稼働力が大きく違うためです。

出面データを継続的に記録しておけば、特定の職人の稼働日数が徐々に減っているといった変化にも早めに気づけます。この変化は、引退予定年齢の仮設定を見直すタイミングを判断する材料にもなります。

採用計画を立てる際の注意点

年齢だけで引退時期を決めつけない

職人の引退時期は年齢だけでは決まりません。同じ60代でも、足場を軽やかに動き回る人もいれば、50代で腰を痛めて下地処理が辛くなる人もいます。年齢はあくまで目安の一つとして扱い、本人の体力や本人の意向も合わせて確認する姿勢が欠かせません。

技能の属人化を放置しない

ある職人にしかできない工程が残っていると、その人が抜けた瞬間に現場が止まります。たとえば外壁の見切り部分の納まりや希釈率の微調整など、感覚に頼っている作業ほど要注意です。属人化している作業を洗い出し、誰が引き継ぐかを決めないまま採用計画だけ進めても、穴は埋まりません。

採用を焦って即戦力ばかり求めない

引退時期が近いと分かると、どうしても即戦力の中途採用に目が向きがちです。ただし即戦力ばかりを追いかけると、若手を育てる期間が確保できず、同じ問題を数年後に繰り返すことになります。未経験者を育てる前提で採用計画を組んでおくことが、長い目で見ると人手不足への備えになります。

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採用計画を立てる手順

現有職人の年齢構成を一覧化する

最初に行うのは、今在籍している職人の年齢と担当工程を一覧にすることです。外壁塗装担当・下地処理担当・吹付担当などの区分で整理すると、どの工程に高齢の職人が偏っているかが見えてきます。

5年後・10年後の稼働可能人数を試算する

年齢構成が見えたら、5年後・10年後にそれぞれ何人が現場に出られそうかを試算します。仮に現在10人の職人のうち3人が65歳以上なら、10年後にはその3人が現場を離れている前提で人数を考える必要があります。

不足人数から逆算して採用時期を決める

試算した将来の人数と、今の受注量を支えるために必要な人数を比べ、不足分から採用時期を逆算します。不足が5年後に出る見込みなら、育成期間を考えて今のうちから採用活動を始めることになります。

育成期間を見込んだ採用スケジュールを組む

未経験者を一人前の職人に育てるには一定の年数がかかります。採用時期は「不足が出る時期」ではなく「不足が出る時期から育成期間を引いた時期」に設定するのが逆算の考え方です。

手順の全体像は次のとおりです。

  1. 現有職人の年齢構成を一覧化する
  2. 5年後・10年後の稼働可能人数を試算する
  3. 不足人数から逆算して採用時期を決める
  4. 育成期間を見込んだ採用スケジュールを組む
立て方 特徴 向いている会社
年齢構成からの逆算型 将来の不足時期を先に見積もってから採用時期を決める 高齢の職人が複数いる会社
欠員発生後の都度採用型 職人が抜けてから採用活動を始める 職人の年齢層が比較的若い会社
即戦力中心の採用型 経験者採用に絞って育成期間を省く 急な欠員で工期に間に合わせたい会社

日報データを活用した高齢化対策の利用イメージ

日々の出面を記録して稼働傾向をつかむ

ここからは利用イメージとして、LINEで日報を送る運用を日々の流れに沿って紹介します。たとえば職人の山田さんが朝、〇〇邸の外壁塗装現場に入ったことをLINEで一言送るだけで、現場名が略称でも正式な現場名に直され、終日なら1.0人工として自動で出面台帳に記録されます。これを職人ごとに毎日続けるだけで、誰がどの現場にどれくらいの頻度で入っているかという稼働傾向が自然に積み上がっていきます。

現場ごとの人工配分から負担の偏りを見つける

築30年マンションの改修のような長期の現場では、特定のベテラン職人に工程が集中しがちです。現場ごとの粗利レポートを管理者が確認すると、人工の配分がどの現場にどう偏っているかが見えてきます。高齢の職人に負担が集中していないかを、感覚ではなくデータで振り返れるようになります。

月末の集計をもとに次の採用判断に使う

月末には出面の集計がまとまり、職人ごとの稼働日数や人工の推移を振り返ることができます。たとえば特定の職人の稼働日数が徐々に減っている傾向が続いていれば、それは引退が近づいているサインかもしれません。日々の記録を積み重ねた先に、採用時期を判断するための土台ができていきます。

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よくある質問

Q. 職人の引退時期はどうやって見積もればいいですか

年齢だけでなく、本人の体力や健康状態、本人の引退意向を定期的に確認しながら仮の引退年齢を設定します。工程ごとの負担度合いも加味し、足場作業が多い職人は目安を早めに、室内作業中心の職人は遅めに見積もるなど、工程特性を反映させると実態に近づきます。

Q. 高齢化対策は何から手をつければいいですか

まずは職人ごとの年齢と担当工程を一覧にする棚卸しから始めます。現状が見えないまま採用計画だけ立てても不足人数が分からないため、年齢構成の一覧化が最初の一歩になります。

Q. 若手が定着しないのに採用計画を立てる意味はありますか

定着率の課題と採用時期の逆算は別の問題として切り分けて考える必要があります。採用時期を先に決めておけば、定着のための育成期間や教育体制づくりにも早く着手でき、結果的に定着率の改善にもつながります。

この記事の監修

井上恭介(株式会社イーテクノス 代表取締役)

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