出面が手書きだと粗利が消える3つの理由
職人5人、現場8件。ホワイトボードの出面を毎月Excelに転記して、それでも粗利が合わない。その原因は転記ミスではなく、もっと手前の仕組みにあります。
1. 月末になると粗利が「だいたいこのくらい」になる
2. 原因1:出面と原価が別の場所に住んでいる
3. 原因2:歩掛と実働がそもそも比較されていない
4. なぜこの構造が何年も放置されるのか
5. 仕組みで断つには、線をつなぎ直すしかない
月末になると粗利が「だいたいこのくらい」になる
月初の会議で聞かれます。「先月の外壁塗装、A現場の利益いくら出た?」
答えが「たぶん20万くらいですかね」になる会社は、実は少なくありません。
ホワイトボードには出面(現場ごとの出勤人数と作業内容)が手書きで並んでいます。でもそれは「今日誰がどこに行ったか」の記録であって、「その現場にいくら人件費がかかったか」の記録ではありません。
見た目は管理できているようで、原価に変換される手前で情報が止まっています。だから粗利は最後、勘で埋めるしかなくなります。
原因1:出面と原価が別の場所に住んでいる
ホワイトボードの出面は「現場管理」の道具です。給与計算や原価計算は別の帳簿、もしくは経理担当の頭の中にあります。
この2つは本来1本の線でつながるべき情報です。職人が現場Aに8時間入れば、それは現場Aの労務費として即座に積み上がるはずのものです。
でも紙とExcelとLINEに分かれて記録されている限り、この線は月末に人力でつなぐしかありません。転記する人が1人休めば、そこで止まります。
原因2:歩掛と実働がそもそも比較されていない
日報は書いています。日報にも書いています。でも「この現場は今どのくらい儲かっているか」を見る画面が、そもそも社内に存在しない会社は珍しくありません。
売上と原価は会社全体でしか把握できず、現場単位のP/Lは決算のときに税理士が作る資料の中にしかない。これでは日々の判断に使えません。
なぜこの構造が何年も放置されるのか
理由は単純です。「今日の段取り」は待ってくれないけれど、「先月の粗利」は待ってくれるからです。
雨で工程が流れれば、その日のうちに職人の手配を組み直さないといけません。でも粗利計算は、多少ズレていても会社は潰れません。だから優先順位が後回しになり続けます。
ここに、今の業界事情が重なります。2026年に入ってから塗装工事業の倒産が前年より増えているという状況があり、資材高騰と職人不足が中小・零細の経営を圧迫しています。
さらに2025年12月施行の改正建設業法では、労働者の待遇改善による人件費上昇や、請負代金の変更方法の明確化が求められるようになりました。契約書の記載事項も厳格化され、著しく短い工期の禁止やリスク情報の提供義務が新たに規定されています。
人件費が上がり、契約のルールが厳しくなる時代に、原価を勘で計算している会社ほど、値上げ交渉の根拠も、価格転嫁の説明もできません。放置していい時期は、もう終わっています。
仕組みで断つには、線をつなぎ直すしかない
精神論で「ちゃんと転記しよう」と言っても続きません。人が変わる、忙しい月がある、それだけで元に戻ります。
断つ方法は1つです。出面を入力した瞬間に、それが自動で現場ごとの原価になる仕組みに変えることです。転記という工程そのものをなくせば、ミスも遅れも起きようがなくなります。
出面管理アプリはまさにこの「入力=原価計算」を目的に作られています。塗装会社向けのAngaは、職人がスマホで出面を入れると、その場で現場別の実働時間と人件費が積み上がる作りになっていて、月末に粗利を「たぶんこのくらい」で語る必要がなくなります。
開発したのは塗装会社を経営する井上恭介さんで、自社の「現場ごとの利益が決算まで見えない」という悩みから生まれたツールです。
出面をホワイトボードからアプリに移すことは、単なるIT化ではなく、粗利を月末の勘から日々の数字に変える作業です。まずは今動いている現場1件分だけ、出面と原価をアプリで並べて見るところから始めてみてください。
先月の利益、聞かれてから電卓叩いてました。
よくある質問
Q. 出面管理アプリを導入すると、今のホワイトボード運用は完全にやめる必要がありますか?
必要はありません。まずは1〜2現場だけアプリ入力に切り替えて、ホワイトボードと並走させる会社が多いです。慣れてきた段階で全現場に広げれば、現場も混乱せず移行できます。
Q. 職人がスマホ操作に不慣れでも出面管理アプリは使えますか?
出勤・退勤ボタンを押すだけの簡易入力で設計されているツールが主流です。文字入力がほぼ不要なので、ガラケー世代の職人でも数日で使えるようになるケースが多いです。
Q. 出面データと現場原価を紐づけると何が一番変わりますか?
最大の変化は、現場が終わる前に粗利の傾向がわかることです。歩掛と実働の差が早い段階で見えるため、追加人工や工期遅れの相談を、現場が終わる前に元請へ伝えられるようになります。