塗料在庫、なぜ目視管理は破綻するのか

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塗料在庫、なぜ目視管理は破綻するのか

棚を見れば余りは分かる。でも使いかけ缶が何リットル残っているかは誰にも分かりません。目視管理が破綻する理由を、症状・原因・放置の背景・断ち方の順に分解します。


1. 症状:買い足しのはずが、また同じ色を1缶買っている

2. 原因①:在庫データが「缶単位」でしか記録されていない

3. 原因②:色番と職人の呼び方がズレたまま在庫台帳に乗る

4. なぜ今まで放置されてきたのか

5. どうすれば断てるか:記録の単位を「缶」から「使用量」に変える

症状:買い足しのはずが、また同じ色を1缶買っている

外壁塗装の現場で、ND(日本塗料工業会の色番)の同じ色番を3ヶ月で2回発注していた。倉庫の棚を見に行ったら、開封済みの缶が奥に半分隠れていた。こういう話は塗装会社なら一度は聞いたことがあるはずです。

棚を目視して「まだあるな」「もうないな」と判断する運用は、缶の中身を見ていません。見ているのは缶が「ある・ない」の二択だけです。開封済みの缶に残量がどれだけあるかは、蓋を開けて撹拌しないと分かりません。

結果として、現場は「念のため新品を買っておく」方向に倒れます。余っている色は倉庫の奥で固まり、足りない色は現場に届く前に発注し忘れる。この2つが同時に起きるのが、目視在庫管理の症状です。

原因①:在庫データが「缶単位」でしか記録されていない

多くの塗装会社の在庫管理は、発注書か納品書ベースで「◯缶入荷」という記録止まりです。缶を開けて何リットル使ったかは、日報や職人の記憶にしか残りません。

歩掛(作業1単位あたりの工数)と標準塗布量から逆算すれば使用量は推定できますが、その計算を毎回する会社はまずありません。理由は単純で、現場が10件あれば発注書の整理だけで月20時間は飛ぶからです。使用量の逆算まで手が回る余力は現場監督にも事務方にも残っていません。

つまり在庫データそのものが「缶が何個あるか」しか表現できない設計になっています。棚を見て判断する運用は、データの粗さをそのまま引き継いでいるだけです。

原因②:色番と職人の呼び方がズレたまま在庫台帳に乗る

クリーンマイルドシリコンを職人が「クリマイ」と呼び、発注担当がそれを別の類似色と混同する。塗料の世界では、正式な色番(日塗工・SR)と現場の口語がズレることがよくあります。

このズレが在庫台帳に乗ると、台帳上は「N-80が3缶ある」ことになっていても、実際に棚にあるのは色味の近い別ロットだったりします。棚を目視しても、素人目にはほぼ同じ色に見えるため、間違いに気づくのは現場で希釈率を合わせて吹付した後です。

台帳と現物のズレは、目視管理では原理的に発見できません。目で見て分かるのは色の系統だけで、ロットや正確な色番までは判別できないからです。

なぜ今まで放置されてきたのか

「困るのは月に数回」だから優先順位が上がらない

在庫のズレで実害が出るのは、買い足し忘れで現場が止まる日か、余剰在庫の廃棄費用が発生した時だけです。頻度で言えば月に数回程度なので、日々の受発注や人工の調整に比べると後回しにされ続けます。

システム導入のコストが「棚卸しの手間」に見合わない

在庫管理システムを入れるとなると、既存の缶すべてにバーコードを貼るような初期作業が発生します。中小の塗装会社にとって、この初期投資は「今困っていないなら後でいい」と判断されがちです。

この2つが組み合わさって、目視管理は何年も温存されます。壊れているのは分かっているが、壊れ方が致命的ではないので直さない、という状態です。

どうすれば断てるか:記録の単位を「缶」から「使用量」に変える

根本原因は、在庫データが缶単位の粗い解像度しか持っていないことでした。断つには、使用した量をその場で記録する仕組みに変えるしかありません。

現場で使った分をスマホから数量入力するだけで、残量が自動計算される。色番も職人の呼び方ではなく登録データから選ぶので、クリマイとクリーンマイルドシリコンの表記ズレも起きません。

私たちイーテクノスは塗装会社を自社で経営していて、この棚卸しのズレに何度も泣かされてきました。その経験から、現場の使用量をLINEで簡単に記録し在庫を自動更新するAngaを作りました。棚を見に行く前に、スマホで残量が分かる状態を作れます。

棚を見て「まだあるな」はもう信じてない。開けてみないと分からないから。

よくある質問

Q. 塗料の在庫管理はエクセルでも十分ですか

缶単位の入出庫を記録するだけならエクセルでも運用できます。ただし使いかけ缶の残量までは反映できないため、余剰在庫や買い足し忘れの根本原因は解決しません。使用量まで記録できる仕組みと組み合わせる必要があります。

Q. 棚卸しの頻度はどれくらいが適切ですか

月1回の棚卸しが一般的ですが、使いかけ缶の残量まで正確に把握するのが目的なら、棚卸しの頻度を上げるより、現場で使うたびに使用量を記録する運用に変える方が効果的です。

Q. 色番の管理ミスを防ぐにはどうすればいいですか

職人の口語(クリマイなど)と正式な色番(日塗工・NDなど)がズレやすいのが原因です。発注や在庫登録の際に正式な色番データから選択する運用にすると、表記ゆれによる誤発注を減らせます。

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