塗装見積もりが赤字を生む理由、Excel手計算の限界
外壁の平米数を目視で出し、Excelに手打ちする。その見積もりが、赤字受注の入り口になっているとしたら。原因は担当者の腕ではなく、見積もりの作り方そのものにあります。
1. 症状:見積もりは合っているのに、現場は赤字になる
2. 原因1層目:目視×Excelは、経験値がそのまま誤差になる仕組み
3. 原因2層目:塗料使用量は「標準塗布量」だけでは読めない
4. なぜ今まで放置されてきたのか
5. どうすれば断てるか:計算を人から切り離す
症状:見積もりは合っているのに、現場は赤字になる
足場を組んだ後で「思ったより面積が広かった」と気づく。破風や軒天の塗り分けを見積書に入れ忘れる。中塗りの塗料が1缶足りず、急遽別の現場から回す。
どれも塗装会社なら一度は経験がある話です。見積もり自体の計算は間違っていないのに、着工後に採算が崩れる。これは担当者のミスというより、見積もりの立て方に構造的な穴があるサインです。
築30年のマンション改修のような大型案件では、面積の出し方1つで数十万円単位のズレが生まれます。現場が10件同時に動いていれば、見積書の見直しだけで月に何時間も溶けていきます。
原因1層目:目視×Excelは、経験値がそのまま誤差になる仕組み
塗装面積の算出は、図面の平米数から開口部(窓・ドア)を引き、立面ごとに係数をかける作業です。ベテランなら暗算でも大きく外しませんが、この「勘」はExcelのセルには残りません。
新人が同じ現場を見積もると、係数の選び方ひとつで数値が変わります。ケレン(下地処理の削り作業)の範囲や、見切り部分の追加吹付けなど、現場ごとの個別事情も同様です。
Excelは計算はしてくれますが、判断はしてくれません。判断を人に依存している限り、担当者が変われば見積もりの精度も変わります。
原因2層目:塗料使用量は「標準塗布量」だけでは読めない
カタログに載っている標準塗布量は、あくまで平滑な面を想定した数値です。実際の外壁は劣化度合いや下地の状態で吸い込みが変わり、希釈率も現場ごとに微調整します。
この「現場補正」を経験と勘でやっている会社ほど、塗料使用量の見落としが起きやすくなります。3分艶の仕上げを指定されたのに、必要缶数を標準値のまま計算してしまい、追加発注で利益が消える。よくあるパターンです。
なぜ誰も気づかないのか
1件1件の赤字は数万円単位で、致命傷には見えません。だから見積もりの作り方を疑わず、「次は気をつけよう」で終わらせてしまいます。原因が仕組みではなく個人の注意力にすり替えられ、放置され続けます。
なぜ今まで放置されてきたのか
塗装業界には、見積もりソフトを入れるより先に「うちは長年この方法でやってきた」という実績が優先される文化があります。ベテラン監督の勘は確かに精度が高く、それが逆に問題を覆い隠してきました。
しかし今、状況は変わりつつあります。職人不足や資材高騰、中東情勢による原油・ナフサ供給不安が重なり、2026年に入ってから塗装工事業の倒産件数は前年同期比で増加しています。利益率の薄い赤字受注を繰り返す余力は、もう業界全体に残っていません。
後継者問題を背景に、中小塗装会社と大手のM&Aや事業承継も進んでいます。属人的などんぶり勘定の見積もりは、事業承継の場面でも「引き継げない経営」として不利に働きます。仕組み化は生き残りの条件になりつつあります。
見積もり自体は合ってるのに、なんで現場終わると赤字なんだって毎回思ってた
どうすれば断てるか:計算を人から切り離す
根本の対策は、面積計算と塗料使用量の算出を「人の記憶」から切り離すことです。図面データから面積を自動算出し、下地状態や希釈率の条件を入力すれば必要缶数まで出す。そういう仕組みに置き換えるだけで、担当者による誤差はほぼ消えます。
私たちイーテクノスも、もともとは塗装会社として現場を回してきた立場です。代表の井上自身が、面積の出し方ひとつで利益が消える経験を何度もしてきました。だからこそ、経験と勘に頼らず精度を出せる見積もりソフト「Anga」を自社の現場のために作りました。
見積もりソフトを入れることは、ベテランの勘を否定することではありません。勘を仕組みに変換して、誰が作っても同じ精度の見積もりが出せる状態にすることです。それができて初めて、赤字受注の連鎖を断てます。
よくある質問
Q. 塗装工事の見積もりソフトを導入すると、Excelとの一番の違いは何ですか?
最大の違いは、面積計算や塗料使用量の算出を人の判断に頼らず自動化できる点です。Excelは数式通りに計算しますが、係数や希釈率の設定は人が入れる必要があります。ソフトなら条件入力だけで、担当者が変わっても同じ精度の見積もりが作れます。
Q. ベテラン監督の勘に頼った見積もりの方が精度が高いのでは?
経験豊富な監督の勘は確かに精度が高い場合が多いですが、その人が抜けた瞬間に精度も失われます。仕組み化された見積もりソフトは、ベテランの判断基準をルール化して残せるため、属人化のリスクを減らせます。
Q. 小さい塗装会社でも見積もりソフトを導入する意味はありますか?
むしろ現場数が少ない会社ほど、1件の赤字受注が経営に響きやすい傾向があります。職人不足や資材高騰が続く今、少人数でも精度の高い見積もりを出せる仕組みは、規模に関係なく必要性が高まっています。