72万円の差額、見積もりソフト未導入が原因

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72万円の差額、見積もりソフト未導入が原因

72万円の差額、見積もりソフト未導入が原因

人工78人工、缶数312缶の外壁改修現場。原価計算を電卓とExcelでやった結果、資材高騰分が抜け落ちて赤字寸前になった塗装会社の話です。何が起きたのか時系列で追います。


1. 見積もりを出した3月、缶数は読めていた

2. 着工直前、塗料屋から届いた1本の電話

3. 再計算にかけた6時間、そして72万円の差

4. 次の現場で変えた3つのこと

5. 見積もりソフトは「計算の速さ」より「更新の仕組み」を見る

見積もりを出した3月、缶数は読めていた

埼玉県内、築28年・5階建て・総戸数36戸のマンション大規模改修です。

工期は42日、延べ人工78人工。下地補修から高圧洗浄、シーラー、上塗り2回まで含めた足場架設面積は約1,800平米でした。

社長は職人上がりで、見積もりは自分の電卓とExcelで作ってきました。過去の現場データをもとに、シリコン系上塗り材を1缶15平米換算で計算し、必要缶数は312缶と算出。ここまでは経験の勘がほぼ的中していました。

問題は缶数ではなく単価でした。見積書を作成したのは3月上旬。使った塗料単価は前年12月の仕入れ価格のまま、Excelの単価セルを更新せずに転記していたのです。

着工直前、塗料屋から届いた1本の電話

着工2週間前、いつも使っている塗料商社から連絡が入りました。

「来月からシリコン系、1缶あたり480円上がります」。

原油価格と原料ナフサの高騰を受けた値上げでした。312缶なら15万円弱の増加です。しかも下塗りのシーラーも別枠で値上げ対象になっていました。

社長はここで初めて、3月に作った見積もりの単価が古いまま元請に提出されていたことに気づきます。Excelのシートは現場ごとにコピーして使い回していたため、単価セルの更新履歴も残っておらず、いつの時点の価格かも分からない状態でした。

塗装工事業の倒産は2026年1月から4月にかけて前年同期比で増えています。職人不足と資材高騰、中東情勢による原油・ナフサの供給不安が中小・零細事業者を直接圧迫しているためです。この現場も、その圧力の縮図でした。

再計算にかけた6時間、そして72万円の差

社長は見積もりを一から洗い直すことにしました。

塗料312缶、シーラー・下塗り材、養生シート、足場材の運搬費、産廃処分費まで全項目を再確認。電卓とExcelでの再計算に要した時間は約6時間でした。

結果、当初見積もりと実際の仕入れ価格の差は72万円に達していました。内訳は塗料本体の値上がり分が約28万円、シーラー・下塗り材の値上がり分が約14万円、残りは運搬費と産廃処分費の変動分です。

元請への価格転嫁交渉は着工直前というタイミングの悪さもあり、最終的に認められたのは42万円分のみ。30万円は自社でかぶる形になりました。

なぜ電卓とExcelで見落としが起きるのか

原因は単価の更新漏れだけではありません。Excelの見積もりシートは案件ごとにコピーして作るため、どの現場のどのセルが最新価格か、社長本人しか把握できない状態になっていました。

2025年12月施行の改正建設業法では、資材高騰時の請負代金変更方法の明確化が求められています。契約段階でリスクと価格転嫁の条件を明記しておかないと、今回のように交渉が後手に回りやすくなります。

次の現場で変えた3つのこと

この一件のあと、社長が変えたのは大きく3つです。

  • 塗料単価は仕入れ先から値上げ通知が来た時点で即日反映する運用に変更
  • 見積書のテンプレートを現場ごとにコピーせず、単価マスターを1つに一本化
  • 契約書に価格転嫁条項を明記し、着工前の交渉タイミングを前倒し

どれも電卓とExcelのままでもできる改善ではあります。ただ、単価マスターの一本化と履歴管理は、Excelの手作業では属人化しやすい部分でした。

実際、次の現場(築15年戸建て、外壁塗装のみ、24缶規模)では、見積もり作成にかかる時間が従来の半分以下になったといいます。缶数計算と単価反映を分けて考えられるようになったことが大きかったそうです。

見積もりソフトは「計算の速さ」より「更新の仕組み」を見る

塗装工事の見積もりソフトを探すとき、多くの人は自動計算のスピードに目が向きます。

でも今回の現場が突きつけたのは、計算の速さではなく単価をいつ・誰が・どう更新するかという仕組みの問題でした。電卓もExcelも計算はできます。更新漏れを防ぐ仕組みがないだけです。

私たちイーテクノスも塗装会社を経営していて、この単価更新の抜け漏れには何度も苦しめられてきました。だからこそ開発したのが見積ソフトのAngaです。仕入れ単価をマスターで一元管理し、現場ごとにコピーしても古い単価のまま出てしまう事故を防ぐ設計にしています。

電卓とExcelを否定するつもりはありません。ただ、資材価格が動く今の状況では、更新の仕組みそのものを見直す時期に来ているのだと思います。

3月の単価のまま出しちまってさ、着工前に72万も差が出てて青ざめたよ

よくある質問

Q. 塗装工事の見積もりソフトは電卓とExcelより本当に効率化になりますか

缶数や人工の計算速度そのものより、単価更新の抜け漏れを防げる点が最大の効果です。今回の現場のように仕入れ単価が古いまま転記される事故は、単価をマスターで一元管理する仕組みがないと繰り返し起こります。

Q. 資材価格の値上がり分はどう見積もりに反映すればいいですか

仕入れ先から値上げ通知が来た時点で単価マスターを即日更新し、契約書に価格転嫁条項を明記しておくことが有効です。2025年12月施行の改正建設業法でも請負代金変更方法の明確化が求められています。

Q. 見積もりソフトを導入する目安の会社規模はありますか

人工10人未満の小規模事業者でも、複数現場を並行するなら単価管理の一元化は効果があります。現場数が増えるほどExcelのコピー運用による更新漏れリスクが高まるため、規模より現場の同時進行数で判断するのが実用的です。

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