歩掛データなき労務費交渉は詰む|改正建設業法への備え方

>

歩掛データなき労務費交渉は詰む|改正建設業法への備え方

歩掛データなき労務費交渉は詰む|改正建設業法への備え方

2025年12月、改正建設業法が施行されます。「人件費を上げろ」と法律に言われても、職種別・工程別の歩掛かりデータを自社で持っていなければ、元請けとの交渉テーブルで根拠を示せません。コスト増をそのまま粗利で被り続ける前に、今できることを整理します。


残業上限(原則)

月45時間

2024年4月から建設業に罰則付きで適用された残業上限の原則値

残業上限(特別条項)

年720時間

特別な事情がある場合でも超えられない年間上限。違反で懲役・罰金あり

改正建設業法施行

2025年12月

労働条件改善・請負代金変更明確化・契約強化が塗装業経営に直結する施行時期

法律が「値上げしろ」と言っても、根拠がなければ交渉は始まらない

2025年12月施行の改正建設業法は、塗装業の経営構造を直撃します。

労働者の賃金水準確保と労働条件改善が義務化され、請負代金の変更方法も明確化されます。つまり「人件費が上がったから単価を上げてほしい」と元請けに言える法的な根拠が、制度として整備されるわけです。

ただし、根拠を示すのは自分自身です。

夜21時の事務所で、手書きの日報を積み上げながら原価を逆算している社長を想像してください。外壁塗装の現場で職人が1人工(にんく・作業員1人の1日分の労働量)あたり何㎡塗れているか、ケレン(旧塗膜や錆の除去作業)と養生で何時間かかっているか——その数字が手元にないまま「単価を10%上げたい」と言っても、元請けは首を縦に振りません。

改正法が用意しているのは「交渉できる席」です。その席で話せるかどうかは、自社の歩掛かり(作業1単位あたりの工数)データを持っているかどうかで決まります。

  • 職種別:塗装工・左官補助・シーリング専門工、それぞれの1人工単価と生産量
  • 工程別:下地処理・中塗り・上塗り・吹付・見切りごとの所要時間
  • 現場別:築年数・素材・塗装仕様(3分艶/5分艶、色番ND・SR系など)による補正係数

この3軸のデータが揃って初めて、「今の単価では赤字になる」と数字で示せます。

残業規制の施行後、「気合でカバー」は罰則付きで終わった

2024年4月1日から、建設業にも残業上限規制が罰則付きで適用されています。月45時間・年360時間以内が原則で、違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

塗装現場では天候による工期ズレが日常的に発生します。雨で2日飛んだ翌週に突貫で取り返す——これが残業規制の施行後は「違法」になりました。

現場帰りの軽トラの中で「今週また60時間超えそうだ」とつぶやいている監督は、今すぐ工期管理の仕組みを変える必要があります。

残業を使えない分、1人工あたりの生産量を正確に把握して工程を組まなければ、工期は守れません。逆に言えば、歩掛かりデータが精緻であるほど、天候リスクを折り込んだ現実的な工程表が作れます。

  • 「晴れ前提」の工程表をやめ、雨天ロスを標準で2〜3日込みにする
  • 職人の段取り時間(資材搬入・養生設置・後片付け)を工数に正式に計上する
  • 吹付作業は風速条件を工程表に明記し、代替工程を事前に用意する

これらを実現するには、過去現場の実績データが不可欠です。感覚値ではなく、現場ごとに記録された数字が、次の現場の精度を上げます。

Angaが塗装業に特化している理由——開発者が塗装屋だったから

Angaは、株式会社イーテクノスの代表・井上恭介が開発しました。井上は塗装会社の経営者であり、「なぜ自社の現場ごとの利益が見えないのか」という問いから開発を始めています。

汎用の工務店向けソフトでは、塗装業固有の単位が扱えません。㎡単価に職人の癖が反映されず、色番(日塗工・ND・SR系)の確認ミスで塗料を誤発注した経験を持つ人間でなければ、何が「使いにくい」かを言語化できないからです。

LINEに溜まる職人からの日報を、事務所のパソコンで翌朝まとめて転記している会社が今もあります。その転記作業の間に、現場ごとの原価は「なんとなく」になっていきます。

Angaが解決しようとしているのは、まさにこの「なんとなく」です。

  • 職人の呼称(「クリマイ」→クリーンマイルドシリコン、「ND-70」→日塗工色番)をそのまま入力できる学習機能
  • 出面(でめん・職人の出勤日数と作業時間の記録)を現場別・工程別に自動集計
  • 歩掛かりの実績値を蓄積し、次の見積時に標準値として参照できる仕組み

「塗装業に特化した」というのは機能の話ではなく、設計思想の話です。誰が・何に困って・どう動くかを知っている人間が作ったツールだからこそ、現場に刺さります。

施行前に自社データを積み上げれば、交渉の土俵が変わる

2025年12月の施行まで、残り時間はあまりありません。ただし、今から動けば間に合います。

歩掛かりデータは、1現場分の記録から始まります。築30年マンション改修の外壁塗装であれば、工程ごとに以下を記録するだけでデータになります。

  • ケレン:対象面積・使用工具・所要人工数
  • 下地処理(フィラー・シーラー塗布):㎡あたりの標準塗布量・希釈率・塗布時間
  • 中塗り・上塗り:色番・艶区分・ローラー塗りか吹付か・天候条件
  • 養生・見切り:テープの種類・範囲・設置と撤去の合計時間

これを10現場分積み上げれば、自社の「標準歩掛かり」ができます。その数字が、改正法施行後の価格転嫁交渉における唯一の根拠になります。

根拠の数字がなければ、交渉じゃなくてお願いになってしまう

「前回と同じ単価で」と言われたとき、「弊社の実績データでは、この仕様の外壁塗装は1㎡あたり〇人工かかっており、現行の労務費では赤字になります」と返せるかどうか——交渉の結果はここで分かれます。

データを持っている会社は値上げを飲んでもらえます。持っていない会社はコスト増を粗利で被り続けます。施行前に自社データを持つこと、それが今できる最大の経営判断です。

あわせて読みたい

By

お問い合わせ

些細なことでもお気軽にご連絡ください。