塗装業の人手不足|求人費倍増でも辞める会社の共通点
求人広告を増やしても職人が辞め続けるのはなぜか。給料と休日を数字で出せない会社ほど若手に選ばれず、人手不足が悪化する構造を分解します。
1. 求人広告費を倍にしても応募が減る理由
2. 本当の原因は「数字を出せない」ではなく「数字を持っていない」
3. なぜこの問題は何年も放置され続けたのか
4. 数字を出せる会社に変えるための3つの断ち方
5. 記録を仕組み化した先にある選択肢
求人広告費を倍にしても応募が減る理由
求人媒体の担当者に「掲載枠を増やしましょう」と言われるままに予算を積んだ経験がある社長は多いはずです。
ですが応募数はほとんど変わらないか、むしろ減っていくケースが目立ちます。
理由は単純です。今の若手は求人票の「アットホームな職場です」「頑張り次第で稼げます」を信用していません。
見ているのは月収の実数、休日の実数、残業の実数です。これを出せない求人票は、内容以前に読まれずに終わります。
広告費を増やす行為は、壊れた蛇口の下にバケツを増やす行為に近いです。水漏れそのものは直っていません。
本当の原因は「数字を出せない」ではなく「数字を持っていない」
多くの塗装会社が抱える問題は、数字を隠しているのではなく、そもそも数字を計算できる状態にないことです。
原因1:現場ごとの人工と歩掛が個人の頭の中にある
見積書には金額が書かれていても、その現場に何人工(1人が1日働く単位)かかったか、歩掛(作業1単位あたりの工数)がどうだったかは、社長や職人の感覚に残るだけです。
年間の総人工を集計していない会社では、平均残業時間も、現場ごとの実質時給も出せません。求人票に書ける数字がそもそも存在しないのです。
原因2:休日は「決めていない」ではなく「天候で崩れる」
塗装は雨で工程が流れる仕事です。晴れの日に詰め込んで、雨の日にまとめて休む運用が当たり前になっている会社ほど、月の休日数が読者に説明できません。
本人たちは「そこそこ休めている」と思っていても、平均を数値化すると年間休日が90日を切っているケースも珍しくありません。数字にしていないから、悪化に気づくのも遅れます。
原因3:見えている数字が「会社全体の売上」だけ
決算書には売上と粗利は載っていますが、それは会社全体の数字です。どの現場が儲かって、どの現場が赤字だったかは決算のタイミングまで分からない会社が大半です。
現場別の利益が見えなければ、給料の根拠となる人件費配分も説明できません。
なぜこの問題は何年も放置され続けたのか
塗装会社の多くは、忙しい時期ほど数字を整理する余裕がなくなります。雨で工程がずれた翌週は現場が渋滞し、事務作業は後回しになります。
「今期は忙しかったから」「来期落ち着いたら集計しよう」という言い訳が毎年繰り返され、集計の仕組み自体が一度も作られないまま10年が過ぎる会社を、何社も見てきました。
さらに構造的な問題として、2025年12月施行の改正建設業法があります。労働者の待遇改善が求められ、人件費上昇への対応と、請負代金の変更方法の明確化が経営に直結する要件になりました。
従来の「長時間労働でなんとか回す」現場運営は、この改正で通用しにくくなります。価格転嫁の仕組みと同時に、労働条件を数字で示せる体制を作らないと、法対応そのものが後手に回ります。
加えて2026年に入り、塗装工事業の倒産が前年同期比で増えているという業界動向もあります。資材高騰と職人不足に加え、原油・ナフサ供給不安が中小・零細事業者を圧迫している状況です。体力のない会社ほど、数字の整備を後回しにする余裕がなくなっています。
数字を出せる会社に変えるための3つの断ち方
精神論で「情報公開を頑張ろう」と決めても、翌月には元に戻ります。仕組みとして断つ必要があるのは次の3点です。
- 現場ごとの人工・工期・利益を、現場が終わった時点で自動的に記録する仕組みを持つ
- 月間・年間の休日実績を天候要因も含めて集計し、求人票に転用できる形にしておく
- 求人票の数字は「平均」ではなく「直近12ヶ月の実数」で更新する
これらは特別な設備投資ではなく、日々の記録の取り方を変えるだけで実現できます。ただ紙の帳票や口頭の申告に依存している限り、記録は必ず抜け漏れます。
国や自治体の支援策も知っておくと選択肢が広がります。厚生労働省の人材確保等支援助成金は、採用や職場環境改善に使える制度で、建設業でも要件を満たせば活用できます。事業承継やM&Aで基盤強化を検討する場合は、商工会議所の相談窓口や専門家派遣制度も利用可能です。
| 対応 | 従来のやり方 | 仕組み化した場合 |
|---|---|---|
| 人工の記録 | 職人の口頭申告・記憶頼み | 現場ごとに日々記録し集計 |
| 休日実績 | 天候で崩れた分は把握せず | 年間実績を数値化して開示 |
| 求人票の数字 | 感覚的な表現で記載 | 直近12ヶ月の実数で更新 |
記録を仕組み化した先にある選択肢
現場の記録を職人のLINE報告や紙の日報に頼っている会社では、集計そのものが月末の作業になり、結局は後回しにされます。
休日、実は何日あるか聞かれて答えられなかった。数えたことがなかった。
私たちイーテクノスも塗装会社を経営してきた中で、同じ悩みを抱えていました。現場ごとの人工や利益が決算まで見えず、求人票に書ける数字が最終的に一つも残っていなかった経験があります。
そこから自社の現場で使うために作ったのが、塗装業向け業務管理ツールのAngaです。LINEでの発注・報告をそのまま記録に変換し、現場別の人工と利益を日々の運用の中で残せるようにしています。
求人広告費を増やす前に、まず社内に「出せる数字」があるかどうかを確認する。そこから始める会社が、結果的に若手に選ばれる求人票を書けるようになります。
よくある質問
Q. 求人広告を増やしても応募が来ないのはなぜですか
求人票に書かれている待遇が具体的な数字でないため、若手から信用されていない可能性が高いです。月収や休日の実数を直近12ヶ月分で示せる会社ほど応募が集まりやすくなります。
Q. 現場ごとの利益を把握するには何から始めればいいですか
まずは現場ごとの人工と工期を終了時点で記録する運用を作ることです。紙やLINE任せだと抜け漏れが起きやすいため、記録を自動的に残せる仕組みを併用すると集計の手間が減ります。
Q. 改正建設業法は塗装会社の何に影響しますか
2025年12月施行の改正で、労働者の待遇改善や請負代金の変更方法の明確化が求められます。長時間労働に依存した運営が難しくなり、人件費上昇分を価格に反映する仕組み作りが急務になります。